研究紹介- 後藤 和久 -


インド洋大津波の被害調査と堆積物調査

2004年12月26日に発生したスマトラ島沖大地震により,人類史上最大規模の巨大津波(インド洋大津波)が発生し,周辺各国の沿岸域に甚大な被害を及ぼしました.これまで,海岸工学を専門とする研究者を中心に現地調査が行われ,家屋や樹木に残る津波の痕跡から津波の規模の推定が行われてきました.一方,このような巨大津波が発生した場合,大量の物質(砂泥,サンゴ骨片,人工物など)が津波の押し波によって陸域,または引き波によって海域方向に運搬されて,津波堆積物として堆積すると考えられます.津波堆積物の層厚や堆積構造,粒度変化は,堆積時の水流の強さを反映するため,これらの情報から津波の規模と津波による物質運搬過程を知ることが可能であると考えられます.このように,津波が沿岸域や海底に及ぼした影響を正確に評価するには,津波堆積物の調査を被害各国沿岸域で行うことが重要であると考えられます.

また,インド洋大津波のような,規模が明らかな津波によって形成された陸域および海域の津波堆積物の層厚,粒度変化や粒子組成などを広域的に調べ,津波による物質運搬に関する水理実験や数値実験の結果と比較することにより,津波による陸-海域方向の物質運搬過程を定量的に解明できると期待されます.このような研究が進めば,今後地層や海底掘削コア試料中から津波堆積物を識別し,さらにその情報を用いて古津波の規模を高精度で推定できるようになり,津波発生の周期性や過去の災害規模を見積もる有効な手段になると考えられます.

このような考えのもと,我々はタイやスリランカにおいて現地調査を行っております。今後も継続して現地調査を行い,津波堆積物の形成メカニズムと津波の規模との関係の解明を目指します.
URLhttp://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai2/staff-students/kgoto/kgoto.htm


白亜紀/第三紀における地球外天体の海洋衝突現象

今から約6500万年前の白亜紀/第三紀(以下,K/T境界),メキシコのユカタン半島に直径約10kmの地球外天体が衝突しました。この天体衝突現象は,恐竜絶滅の一因と考えられており,天体衝突による地球表層環境の擾乱などについて活発に研究がなされています。

  K/T境界での天体衝突現象の特徴は,1)地球史上最大規模だったこと,2)水深200m以浅の浅海域に衝突したことが衝突クレーター(チチュルブクレーター)の発見によって明らかにされていること,3)イリジウムや衝撃変成石英,スフェルールなど,衝突放出物(イジェクタ)が世界中に分布していること,4)衝突地点周辺には層厚2~700mに達する巨大なK/T境界層が数多く報告されていること,5)衝突地点が炭酸塩岩(CaCO3)や硬石膏(CaSO4)だったため,大量のCO2やSO4ガスが放出されたと考えられること,などがあげられます。

  これまで,我々はK/T境界の衝突が海洋への衝突だったことに着目してきました。なぜなら,地球表層の約6割が海洋で覆われていることを考えると,K/.T境界のような海洋への天体衝突現象は地球史上で頻繁に起こっていたと考えられ,津波現象に代表される海洋擾乱が地球環境や生命の進化過程に大きな影響を及ぼしたと考えられるにもかかわらず,海洋衝突に関する研究があまり進んでいないからです。これは,海に埋没している衝突クレーターを発見することが困難なことが原因です。そのため,衝突クレーターが特定されているK/T境界での衝突現象は,衝突による津波発生から伝播,そして津波堆積物形成までの一連の過程を詳細に調べることのできる,ほぼ唯一の例といえます。

さらに現在,チチュルブ衝突とK/T境界層の同時性についての論争が起こっています.我々は,こうした問題についての検証を行い,チチュルブ衝突は従来言われているようにK/T境界に起きた可能性が極めて高いことを確認しました.

我々のグループでは,今後は津波現象だけでなく,天体衝突による様々な環境擾乱に対して,現地調査と試料分析を行なうことで解明していく予定です.
URLhttp://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai2/staff-students/kgoto/kgoto.htm
   
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