研究紹介- 滝沢 寛之 -


未来のスパコンを創造し、それを活用する技術を開拓する

現代の日常生活は様々なコンピュータであふれかえっており、その性能は十分に高くなっていると感じている人も多いかもしれません。しかし、最新型のコンピュータでも性能が全然足りない分野はたくさんあります。特に科学技術の多様な分野において、大規模コンピュータシステム(いわゆるスーパーコンピュータ、スパコン)を使った数値シミュレーションは必要不可欠な存在になっており、世界中でし烈なスパコン開発競争が起こっています。現在でもスパコンは大規模で複雑な計算システムですが、高性能化を実現するために今後さらなる大規模化、複雑化が避けられません。そのように大規模で複雑なスパコンを使いこなすことは、それ自体が重要な研究課題です。我々はこの課題に対して、システム設計からそれを使いこなすプログラミングや利用技術まで、高性能計算技術を幅広く研究開発しています。特にスパコンの性能を引き出すことができるようにプログラムを修正する作業(性能最適化)を支援するために、大規模な国際共同研究プロジェクトを指導し、先駆的な研究を行っています。同研究プロジェクトに関する詳細は以下のページをご覧ください。

URLhttp://xev.arch.is.tohoku.ac.jp


グラフィックスハードウェアを用いた高性能計算

現在,安価なパソコンにさえ高性能な描画用ハードウェア(graphics procssing unit, GPU)が搭載されています.好条件さえ揃えば,最近のGPUはCPUよりも高い演算性能を達成することがしばしばあります.ゲームやCG, さらには一般向けのOSですら3次元描画機能を利用しているので,PCに搭載されるGPUの性能は今後もさらに強化されていくでしょう.このような高い処理能力を持つGPUを描画処理だけに使うのはもったいないので,描画以外の一般の計算にもGPUを利用しようという動きがあります.これをGPUによる汎用計算(general-purpose computations on GPUs, GPGPU)と呼びます.GPGPUではGPUもプロセッサとして使われますので,PCはCPUとGPUというまったく異なった二つのプロセッサを持つ複合型計算システムとして扱うことができます.

我々はこれまでにさまざまなGPGPUのアプリケーションを研究開発してきました.これらの目的は,CPUとGPUといった不均一なプロセッサ群を効果的に利用するための方法を探ることです.この目的に関連して,最近ではPS3に搭載されている不均一なマルチコアプロセッサであるCell Broadband Engineを科学技術計算に利用することも試しています.今後さらに計算システムの不均一化・マルチコア化が進んでいくことは確実ですので,そのようなシステムの能力を最大限に活用するための方法論の確立は非常に重要な課題です.


コンピュータアーキテクチャ

過去数十年間,チップ上のトランジスタ数を指数関数的に増加させることによってマイクロプロセッサの急速な性能向上が達成されてきました.しかしそれは同時に,それらの膨大な数のトランジスタを動かすための電力消費も増加させ続けてきました.現在,チップ上の電力密度は核反応炉並になりつつあると言われています.この電力問題が,マイクロプロセッサを設計する上で最も難しい問題となっています.

チップ上で現在利用していないハードウェアでも電力を消費するのは無駄なので,使っていないなら電力供給をやめたいと考えています.電力供給を止めても全体の性能に影響が少ない部分を見つけ出し,選択的に電力供給を止めることを目指しています.かしこく電力制御することで,電力あたりの性能を大幅に向上させることができると考えています.



遊休計算資源を用いた大規模分散計算

膨大な数のPCがインターネットにつながっていますが,それらの多くは電源が入っていても大して使われていないヒマな状態(遊休状態)にあります.あるいは,スクリーンセーバを実行するためだけに忙しいかもしれません. そのような状況なので,遊休状態にあるPCの計算能力を寄せ集めて大規模な分散計算を実現しようという試みがこれまでいくつもありました.その中でもSETI@homeやFloding@homeといったボランティアコンピューティングプロジェクトが単独の計算システムで実現するのは到底不可能な,非常に高い演算性能を達成することに成功しています.しかし,そのようなプロジェクトでは,プロジェクト参加者は自分のPCを他人に貸してあげるだけで,自分が何か大きな計算をやろうとしたときに分散計算の仕組みや他人のPCを利用することはできません.

そこで我々は「みんなでPCを持ち寄って処理能力を共有する」ための新しい仕組みを作りたいと思っています.たくさんの参加者が集まれば,多数のPCから今この瞬間に利用可能なPCだけを効率よく探す仕組みや,各PCへ仕事を割当てる仕組み,セキュリティなどの機能が求められます.このプロジェクトでは特に,信頼できないコンピュータを使って安全に計算する方法を確立することを目指しています.




大規模データマイニングに関する研究

情報が氾濫している今日,データマイニングは人間が実際に探さなければならない範囲を限定するという目的で非常に便利です.しかし,データマイニングを実行するための計算システムにとっては,巨大なデータベースから実用的な時間内に有望なデータだけを探し出すという過酷な仕事が求められます.今後,データベースがさらに肥大化すると,データマイニング用計算システムの処理能力もさらに向上させなくてはなりません.我々はデータマイニングを高性能計算,スーパーコンピューティング技術の重要な応用先と位置付け,その効果的な実現法を実装技術と計算手順(アルゴリズム)の両面から研究開発しています.

   
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