研究紹介- 江藤 裕之 -


言語学史

 哲学の探究に哲学史が不可欠であるように、言語学を学ぶ上で言語学史の知識は必要だと考える。そして、これまでどのような「言葉の研究」がなされてきたのかという点を押さえておくことは、広い意味での人間の精神の歴史をたどることにもなる。その背景には、「何が真理か」という視点よりも、「人々は何が真理だと考えてきたか」というPhilologyの視点を置いている。私の言語学史への関心は英語史を学んでいく過程で、19世紀ドイツの史的比較言語学の隆盛に興味を持ち、その概要を学んだことがきっかけであった。
言語学史は、ジョージタウン大学、及び上智大学に提出した博士論文の中心的テーマとなっており、その後も19世紀から20世紀初頭にかけての欧米の言語学史に関する研究発表を続け、近年では日本の言語学史を西洋の学界に紹介する仕事をしている。言語学史は、言語研究の研究と言ってよいが、今後も言語の研究をLinguisticsのみならず、Philologyという視点からとらえ、言語学史研究から得たパースペクティブから多くのヒントを得つつ、「言語(学)と人間」、「言語(学)と文化」というテーマを軸にして、さまざまな応用研究を行っていきたいと考えている。
URLhttp://philologia.jp/lang-hist.htm


通時的意味論研究

 言語史(英語史)研究では、音象徴や語源、つまり、言葉(音)の持つ根本イメージやその意味変遷の研究を通して人間の精神(思考)の根源と歴史に迫り、そこから広い意味での文化現象を解釈・説明したいと考えている。これは、私が大学院の頃から続けている英語・ドイツ語を中心とした通時的な意味研究であり、「象徴としての言語」の歴史的変遷から人間精神の歴史を追体験しようとする試みである。このような研究は、言語と人間、言語と文化の研究に奥行きを与えてくれるものと信じている。
英語の史的研究を行うには、他のゲルマン語(特にドイツ語)との比較研究は極めて重要である。ドイツ語の知識は、語彙面においても統語面においても英語の古層を理解するためには必要不可欠であり、それが現代英語の現象を解く鍵にもなっている。その意味で、ドイツ語の知識は私に英語理解のひとつの有力な鍵を与えてくれるものであると考えている。
URLhttp://philologia.jp/etymology1.htm


リベラル・アーツ教育としての外国語(英語)教育

 外国語(英語)教育については、言語学史、並びに史的意味論研究の成果を授業で実践している。言語学史の知識からは、言語学習や言語教育の理論と実践の推移を見ることから、今日の日本の英語教育に重要なものは何かを考える。また、言語の史的比較研究は、現代英語の文法構造や語形成についての歴史的・比較的説明に有用である。
 さらに、リベラル・アーツ教育の視点から英語教育をとらえることで、言葉はコミュニケーションの道具のみならず、それを話す人々の世界観や思考を表しているというフンボルト的言語観をベースに、言語の学習を契機として、比較文化的視点や歴史的視点、さらには地域研究をも含んだ学びにまで高めてゆきたい。また、外国語(英語)教育は実用を目指すと同時に、思考力を鍛える教養教育的効果も期待できるものであると信じている。外国語教育を通して、自らを振り返る鑑として言葉を考え、学ぶ動機となるような言葉の教養教育を行ないたいと考えている。知力を高め思考力を高めるリベラル・アーツ教育の一環として、学生が、考え、理解し、納得する英語の授業法を模索している。
URLhttp://philologia.jp/grammar.htm


グレート・ブックス・セミナー

 Great Books of the Western WorldやEncyclopedia Britannica(15th ed.)の編集主幹として有名なMortimer J. Adlerが中心となって開発したGreat Books Seminarについて調査し、そのノウハウを日本の教育現場に生かす手法を研究している。 名著を読み、対話を通じて、名著の言葉に学ぶというGreat Books Seminarは、細分化された専門領域での研究、実践活動に入る前に必要な思考訓練の場を与える有効な手段だと考える。そこでは、真、善、美、自由、平等、正義といった私たちが避けて通れない基本的な概念(Great Ideas)を複数のGreat Booksを読みながら考えていくというノウハウが確立している。その手法を高校から大学にかけての教育現場にどのように取り入れるか、そして生涯教育の一環としてどのようなシステムを創造していくかを研究し、公立図書館、大学、高等学校、あるいは私的なサークルなどで実践してきた。このGreat Books Seminarに関する研究・実践は今後も継続していきたいと考えている。
URLhttp://www.k-i-a.or.jp/shonan/publication/greatbooks/index.html
   
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