研究紹介- 鈴木 紀毅 -


現生放散虫の研究

 化石記録をより精度高く解釈するために,現生放散虫の観察・実験を2008年5月下旬に広島大・豊潮丸に乗船,2008年12月上旬に琉球大学・瀬底実験所で行った.豊潮丸の航海では,70個体の挙動をハイビジョン撮影し,軸足の機能,軸足の行動,餌取行動,成長について新知見が得られた.多層式鉛直開閉ネットを使って南西諸島では初めて水深500m以深の深度分布調査を行った.また,放散虫の研究でこれまで着目されていなかった幼体/全個体比率を調べたところ約50~80%と高く,reproductionの地点から遠くない場所から流されてきたことを示唆する結果が得られた.瀬底実験所では,珪質殻の成長を生きた個体で蛍光染色できるPDMPOという試薬を試験的に用いて成功した.また,現生プランクトンの研究者の間で放散虫の最新知見を知りたいという要望が大きいことがわかり,そのための原稿を投稿中である.


タイプ標本再検討 と骨格構造研究

 2004年以来続けてきたEhrenberg-Haeckel Projectの成果のまとめを行った.タイプ標本を含む,撮影した1,500個体をすべて公表することとなり,国立科学博物館紀要のモノグラフとしてCD-ROM出版することで,準備を進めている.タイプ標本を再検討した結果,現在安定している慣用を混乱させる事実も多いことが判明し,今回は事実を提示するにとどめ,タイプの取り扱いは国際放散虫研究者協会で審議する方向で調整を進めている.
 骨格構造の研究については,透過顕微鏡では方位の分からないLarnacrillidae亜科について,3Dシミュレーションで,見かけの変化の問題を解決した.


放散虫シノニムデータベース

放散虫の多様性の解明のため,PaleoTax for Windowsを利用して過去に記載された放散虫のシノニムのデータベース化をすすめている.放散虫が初めて記載されたMeyen (1834)から,1997年まで新種記載論文について,年代昇順に入力を終え,放散虫関連論文全体のうち50.0%が終了した.1997年までに2,600属13,000種の放散虫が記載されたが,実在するのは6,000種であることが分かった.


放散虫の多様化現象

 放散虫の多様化について,現在は3つのアプローチを行っている.1つめは構成種をすべて明らかにする全群集解析,2つめはNassellaria目が多様化する前期―中期三畳紀と前期―中期ジュラ紀のそれぞれについて,進化系統的基盤に基づいた解析,3つめは古地理分布の観点からの放散現象である.これらについて,学生とともに研究をすすめている.全群集解析はIODP試料を使った研究が中心である.前期―中期三畳紀の多様化現象は,Triassocampe属に対象を絞って基盤(C)(代表:鈴木紀毅)の研究の一環としてすすめている.前期―中期ジュラ紀については日本のジュラ紀付加体の各所に分布する炭酸塩マンガンノジュールから放散虫群集を取り出し,多様化が認められるNassellariaの属を絞り込んでいる段階である.古地理分布については,放散虫の大量絶滅のあったペルム紀末以降と現在の両極分布/反赤道分布の発達過程に注目したまとめを行うともに,中新世以降の約50種について古地理分布変遷を共著論文としてまとめた.


北部北上帯の構造発達史

 2007年に北部北上帯の西を占める葛巻―釜石亜帯について東北大学総合学術博物館の紀要にまとめたが,東を占める安家―田野畑亜帯と北方延長にあたる渡島帯との関係については不十分であった.今年度はこれらの地体と新知見を組み合わせたまとめを行った.とくに安家―田野畑帯の岩相―地質年代プロファイルは大幅に見直しを行ない,地体構造と時代極性が逆転することになる問題点を洗い出しした.
   
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