研究紹介- 伊藤 隆 -



1. その場ラマン分光測定と電池活物質薄膜の安定性
 リチウムイオン2次電池活物質の評価にその場ラマン分光法を導入し,興味ある結果を得ることができている.正極材料(LiCoO2, LiMn2O4),負極材料(黒鉛,メソフェーズカーボン),電解液,電解質等の電池構成要素のその場ラマン分光測定を試み,活物質の絶縁体-導電体転移や相変化,それと関連した電子伝導性変化,さらには電池活物質最表面の振動状態のその場測定に成功した.固-液界面は電気化学反応が進行する重要な反応場であり,その反応場における統一的な電気化学反応解析を行うことにより,電池の高性能化,長寿命化につなげることができつつある.電極の安定性や導電率等の電気化学物性を電池特性と関連付けて議論を展開することができている.一方で,その場測定を行うために,電池活物質の薄膜化にも取り組んでいる.薄膜電極を利用したその場ラマン分光測定をも可能となっており,薄層電池活物質の電気化学物性を分光学的に解明することにも成功している.

2. 高温溶融炭酸塩におけるその場ラマン分光測定
 溶融炭酸塩型燃料電池のKeyとなる反応は酸素還元反応であるにもかかわらず,腐食性高温融体を用いているため実験的な難易度が高く,分光学的観点からその反応機構の最終決定がなされてこなかった.腐食性高温融体中におけるその場ラマン測定のために,カスタムメイドな電気化学セルと光学系を構築することにより,高温溶融炭酸塩中からのその場ラマンスペクトルの測定に初めて成功した.高温融体中には,スーパーオキサイドイオンが存在することを分光学的に捕らえることができ,酸素還元反応機構中にスーパーオキサイドイオンが関与していることを実験的に初めて確証している.また,電気化学的な酸素還元反応解析にも取り組み,活性酸素の関与を分光学的な切り口より解明している.

3. 分子エレクトロニクス材料のその場ラマン分光学解析
 近年の分子エレクトロニクスの進展に伴い,分子自身の持つ電子物性を分子エレクトロニクス材料として用いる動きが近年顕著である.筆者は,ニトロアゾベンゼン分子(NAB)電子物性を,電気化学的手法を用いながら,その場ラマン分光法を用いることにより分子の電子物性の機構の解明を試みた.NAB分子のスイッチング機構解明のために,電気化学的な酸化還元反応時における分子化学的な電子伝導機構の解明が望まれていた.これらの研究成果により,NAB分子の結合状態と分子動力学的なシュミレーションを反映しながら,レドックス反応を分光学的な原子・分子レベルの観点より考察することに成功している.この分野の研究は今後の研究展開に大きな方向性を示しており,“ドライエレクトロケミストリー”として更なる発展が期待されている.

   
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