研究紹介- 吉田 慎哉 -


機能性材料や集積回路を組み込んだ高性能・高付加価値マイクロ/ナノシステムの研究開発

 私の研究分野は,MEMS(微小電気機械システム)です。MEMSは,半導体微細加工技術に基づいて作製される極めて小さなセンサやアクチュエータのことで,圧力センサ,加速度センサ,ジャイロ,インクジェットプリンタヘッド,プロジェクタ用イメージエンジンなどとして世の中で広く使われています。
 このように,MEMSは産業的に大きな成功を既におさめておりますが,健康長寿,安心安全,省資源・省エネルギー社会などの実現のために,その必要性は益々高まっています。それに伴い,従来のものの性能や機能を凌駕した新しいデバイスの創製が求められています。
 このような社会的要請に応えるべく,私は,『機能性材料や集積回路を組み込んだ新しいMEMS』と,それを作製するための加工技術の研究開発に日々取り組んでいます。

 現在の研究課題は,以下のとおりです。
・MEMSセンサ用超高性能圧電単結晶膜のSi基板上への形成
・ロボットや自動車の自動運転・制御のための高性能圧電MEMSセンサ群の開発
・圧電単結晶薄膜形成のための量産性に優れたエピタキシャル成長技術の開発
・巨大な圧電効果と耐熱性とを両立する革新的圧電材料の探索
・体の中から健康状態をチェックする『飲み込み型センサ』のシステムと要素技術の開発
・LSI-MEMS集積化技術を用いた高性能バイオセンサ

 学術論文を書くことだけを目指すのでなく,社会や産業に具体的に役に立つ成果を出せるよう,学生の皆様と共に研究活動を進めていきたいと思っております。
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【研究成果】 超高性能圧電単結晶薄膜のSi基板上への形成

 MEMSにとって,電気エネルギーを機械エネルギーに変換したりする『トランスデューサ』は最も重要な要素です。例えば,圧電薄膜の性能が上がれば,圧電MEMSデバイスを高性能化できます。あるいは,従来と同じ性能を実現するのに,より小さい大きさで済み,結果として低コスト化できます。すなわち,高性能な材料をMEMSに組みこむことは,産業的競争力の強化につながります。
 本研究では,圧電ジャイロ(角速度)センサや,超音波トランスデューサ,振動型環境発電デバイスへの応用に最適な「理想配向PZT系単結晶薄膜」を,MEMSの母材であるSi基板上に形成することに成功しました(図1)。この圧電トランスデューサ薄膜の性能指数(圧電定数の自乗を誘電率で除した値)は,一般的な圧電多結晶膜の5倍以上に達します(図2)。これは,Si基板上の圧電薄膜では世界最高の値であり,もしこの圧電薄膜を用いれば,従来のものと比較して『圧倒的に』高性能,もしくは小型の圧電MEMSデバイスを創出できることを意味します。
 自動車やロボットの自動運転・制御等の分野において,小型で安価,かつ高性能なジャイロセンサや超音波トランスデューサが求められております。また,ワイヤレスセンサネットワーク用デバイスでは,高出力の振動型環境発電デバイスが求められております。我々の開発したこの超高性能圧電単結晶薄膜を用いることで,それらのニーズに応えた圧電デバイス群を創出できると考えております。

[参考文献]
[1] Shinya Yoshida, et. al., Sensors and Actuators A: Physical,239,(2016),201-208
[2] Shinya Yoshida, et. al., IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,61(9),(2014),1552-1558
[3] 吉田慎哉,森山雅昭,“PZT薄膜とPZT MEMS” 金属, 85(9), (2015), 21-27

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【研究成果】 ダイヤモンド電極集積化LSIバイオセンサアレイの開発

 近年,LSI上にDNAやタンパク質などの生体分子を検出する機能を設けた「LSIバイオセンサ」の開発が精力的に進められております。演算機能やアンプを集積化したLSIを用いることで,生体分子の電気的かつ高感度,高速の検出ができます。
 これまでの電流検出型LSIバイオセンサの作用電極には,プロセス適合性の問題から,AuやPtなどの貴金属電極が用いられてきました。しかし,これらの電極の電位窓は比較的狭く,それによって測定対象物が制限されているという問題が生じていました。また,金属電極表面は,生体分子の吸着性が大きいといった問題も持っております。
 そのような問題のない理想的な電極材料の一つとして『ダイヤモンド』が近年注目されております。しかし,高品質のダイヤモンドは通常800 °C以上といった高温環境下にて合成されるため,熱に弱いLSI上に直接形成することは不可能でした。
 そこで我々は,転写法を用いることで,LSIバイオセンサにダイヤモンド電極を集積化させることに成功しました。高温環境下にてダイヤモンド電極をシリコン基板上に形成し,樹脂接着層を介してそれをLSI基板上に低温で転写します(図1)。これによって,LSIにダメージを与えることなくダイヤモンド電極を集積化できました。そして,試作したダイヤモンド電極集積化LSIバイオセンサアレイを用いてヒスタミンの酸化電流を検出することで,その拡散の様子をリアルタイムにイメージングすることに成功しました(図2,3)。これは,貴金属電極では達成できないことです。
 本デバイスは,ヒスタミン神経などの生体組織からのヒスタミン放出のモニタリングや,細胞レベルでのアレルギー試験,ドラッグスクリーニングなど,様々な分野への応用が期待できます。

[参考文献]
[1] Hayasaka, T., Yoshida, S., et. al., (2015). Journal of Microelectromechanical Systems, 24(4), 958–967.
[2] 吉田 慎哉、井上久美、末永智一“ダイヤモンド集積化LSIによるバイオセンシング・イメージング” InterLab 110号 (2014) 24-29

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