研究紹介- 木口 賢紀 -


緩和型強誘電体におけるナノ組織と組成相境界

強誘電体の中でも、リラクサーと呼ばれる一連の材料は、強誘電体の10倍近い誘電率を示すことから注目されているが、本質的に不均質な構造を持つため、その構造の理解は長年の課題であった。我々は、原子分解能電子顕微鏡法により、代表的なPb(Mg1/3Nb2/3)O3系リラクサーのヘテロナノ組織形成メカニズムと誘電特性の関連の観点からリラクサー現象発現メカニズムの解明に取り組んでいる。特に、異種強誘電体結晶の固溶体においては、ある組成域で巨大誘電特性発現に深い関わりを持つ組成相境界(MPB)と呼ばれる異種結晶相の共存状態が出現することが知られてきたが、その詳細については未だ議論が続いている。我々は、従来回折法だけで議論されてきたMPB近傍の結晶構造を収差補正電子顕微鏡法により原子分解能で明らかにすると共に原子変位場の解析から、MPB出現組成や微細組織形成がバルク結晶と薄膜とで大きく異なることを見出し、MPBにおける構造の揺らぎや相間の揺らぎと言った揺らぎの協奏現象に着目して、微視的な観点からMPB発現のメカニズムの解明に取り組んでいる。


窒化物・酸化物半導体における特異構造の解析

窒化物半導体・酸化物半導体薄膜では、転位やナノボイドなど残留する格子欠陥やエピタキシャル成長に伴う残留歪みが電子・光学デバイスの物性向上や創製の障害となってきた。本研究では、これら結晶の非完全性についてナノスケールからミクロンスケールにいたるまで、かつ2次元から3次元までマルチスケールで解明し、格子欠陥や弾性場を活用した窒化物半導体新機能発現・新デバイス創製のための「特異構造の結晶科学」に関する学理の究明を目指す。
URLhttp://tokui.org/index.html


常誘電体結晶の超薄膜化による準安定相制御と強誘電相の発現

ZrO2はバルク状態で複雑な強弾性相転移挙動を示す興味深い誘電体材料で、室温では歪みの大きな単斜相が安定である。従来、Y2O3などの希土類酸化物を固溶させることによって高温相である正方相や立方相を室温で安定化し,この問題を化学的に回避してきた。しかし,化学的ドーピングは高濃度の電子的欠陥の起源となりゲート絶縁膜としての使用は困難であった。本研究では,ZrO2の膜厚を3 nmまで薄くすることによって、高温相である正方相の物理的に準安定化を実現し、リーク電流や界面トラップ電荷等の電子的欠陥の発生要因の大幅な削減を実現した。さらに、近年強誘電性の発現が見出されたY2O3-HfO2やZrO2-HfO2などの固溶体において、バルクでは存在できない斜方晶薄膜のエピタキシャル成長と分極構造やドメイン構造の解明を進めている。


強誘電体薄膜における分極構造とドメイン構造とその形成メカニズム

酸化物強誘電体材料は、不揮発性メモリなど記録媒体や超音波アクチュエータなど動力源、エネルギーハーベスティングなどエネルギー源として注目されている電子材料である。我々は、強誘電性発現に深く関わる自発分極構造や自発分極が回転するドメイン境界の構造を原子変位場の観点から明らかにし、代表的な強誘電体であるPbTiO3やPb(Zr,Ti)O3エピタキシャル薄膜におけるドメイン構造形成メカニズムを格子欠陥との弾性相互作用の観点から研究を進めている。


弾性場に着目したMg合金LPSO・GPゾーンの形成メカニズム

Mg基3元系合金において、長周期積層欠陥構造に固溶元素が濃化したシンクロ型LPSO相はキンク変形による新たな強化機構の発現と深く関わっている。しかし、その形成メカニズムは未だ多くの謎に包まれており、その形成メカニズムの理解や組織制御が基礎科学としても実用材料としても重要となっている。我々のグループでは、最先端の収差補正電子顕微鏡を活用し、時効やLPSO形成初期過程における元素分布及び弾性場の変化の観点から研究を進めている。特に、時効処理条件や仕込み組成の僅かな差によって析出挙動や析出構造に顕著な違いが現れ、従来の解析法では検出できない精度で微視的な立場から時効析出のメカニズム解明に取り組んでいる。
   
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