研究紹介- 永井 大樹 -


機能性分子センサーの研究開発

半導体式センサーに代わる新しい概念のセンサー技術として,"機能性分子センサー"の研究を行っている.分子センサーは,圧力や温度に対するセンシング機能を有する錯体化合物の分子を,ナノスケールの大きさのセンサー素子とみなし,それらの発光の強度や寿命から,物体表面の圧力や温度を測定する技術である.分子センサーには,2次元的な面情報が得られる,非侵襲での計測が行える,複雑な配線や配管が不要である,などの特長がある.また,分子センサーを利用すると,従来のセンサーを設置できないような,微小な物体周りの計測を行うことも可能になる.
 機能性分子センサーの開発には,化学,光電子工学など,異分野との学際研究が欠かせない.当研究室では,宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと協力して,文部科学省の科学技術振興調整費による知的基盤プロジェクト"MOSAIC"を推進してきた.
 これらの研究により,現在,分子センサーを使って,以下に示す極限的な熱流体現象の計測が可能になっている


宇宙機搭載用先進型熱制御デバイス及びシステムの研究/開発

近年、衛星などの宇宙機では搭載電子機器の高密度実装化に伴う発熱密度の増大とその複雑な配置制約に対応できる信頼性の高い熱制御デバイスが望まれている。その中で現在、注目されているのが相変化を利用した熱制御デバイスの2相流体ループ(LHP)や自励振動型ヒートパイプである。しかしながらLHPに関して、日本では、設計データ/設計式の不足/欠如等の点で未成熟であり、海外の技術に頼らざるを得ない状況であり、また、自励振動型ヒートパイプに関しても、“国内開発”でありながら、未だ、設計/動作理論が確立されてはいない。したがって、今後、ますます高機能化および小型/複雑化していく電子機器および宇宙機に対応できるものは現状では日本にはないといわざるを得ない。また、センサ冷却で冷凍機を用いた場合のコンプレッサ側の排熱なども考えられてはいないため、衛星開発のクリティカルな部分で海外技術に頼らざるを得ない。さらに、センサなどの開発は世界でもトップレベルだとしてもシステムとしてみた場合に国内技術だけで成り立たないようでは、開発の進め方にも大きく影響するだろう。したがって、国内技術で熱制御デバイスを開発することが急務であると考える。
次に宇宙機から転じて民生分野での利用を考えた場合、本研究でターゲットとしている温度領域(80K~150K)は高温超電導電子デバイスの冷却に使用している冷凍機からの排熱用の伝熱素子として考えることが可能である。これは、社会の高度化に伴い超電導応用技術が重要な位置を占める場合に高信頼性伝熱素子として必須の技術になると考える。


極低温流体中における衝撃波伝播に関する研究

極低温流体と呼ばれる超流動ヘリウム中に衝撃波管で発生させた衝撃波を入射させ、そのときに生じる圧縮衝撃波と温度衝撃波の伝播の特性を調べた。また同時に、衝撃波により加圧することでHeII-HeIへの相転移を起こさせる。これらの現象は、高度に非定常であるため、それらを解明することは工学的、物理的に非常に面白い現象である。


低速流れ計測のための分子センサー技術

もともと航空宇宙分野で発展してきたPSPは,より多様な産業への普及が望まれてきている.特に自動車ボディ周りの流れに代表されるような低速流れにおける物体表面上の圧力分布測定は自動車,鉄道,建築など多様な産業と関わりがあり,このような流れ場へのPSPの適用は強く切望されている.しかし,最大のネックは,PSPの計測精度が低速では急速に悪化することである.例えば,自動車の速度が時速90kmでは,一様流の動圧は0.25kPaとなり,これは PSPの計測限界とほぼ同程度の値である.このような小さな圧力の変化を,現在のPSPを用いて計測するのは,容易なことではない.そのためPSPの低速流れへの適用は,"測定精度の限界への挑戦"であるといえる.
 そこで,本研究では基準の必要ない"Lifetime Imaging 法"を中心に,低速流れにおけるPSP計測システムの確立を目指している.


マイクロ気流診断技術

 近年,MEMS技術の発達により,マイクロガスタービン,マイクロスラスタなどといった微小な機構を持ったデバイスが製作されてきている.またそれに伴い,それらの性能を評価するための基本的な物理量である「圧力・温度」の測定が望まれてきている.しかしながら,MEMS内は極端に小さく,また複雑であるため,通常の圧力・温度センサーなどでの測定は非常に困難である.それらの要求に応えるものとして,PSP(感圧塗料)が挙げられる.PSPは,基本的には分子センサーであり,MEMS内でも十分な分解能を有する.加えて,非接触で計測を行えるため,内部に擾乱を起こすこともない.
 そこで当研究室では,マイクロメートルからミリメートルサイズの微小流体要素を作製し,その内部および外部の流れの熱空力特性を調べている.これらの技術の研究開発を通じて,マイクロ気流診断技術を確立し,将来は,MEMSデバイスやマイクロ飛行体の設計技術の高度化に寄与したいと考えている.


流れ場の画像診断技術

航空機やロケットなどの熱空力設計を行うには,物体周りの流れ場を,"イメージ"することが重要である.将来の風洞実験には,現在の医療診断技術がそうであるように,対象を多方面から多角的に可視化し,コンピュータ上で再構成する技術が不可欠のものとなると予想される.
 このような展望のもと,当研究室では,熱流体現象の融合的な計測技術の開発に取り組んでいる.現在,もっとも重点をおいているのは,圧力と温度の同時計測であり,これ実現するため,"Lifetime Imaging 法"の研究を行っている.この手法は,パルス光で励起されたセンサー分子の発光の減衰を,ゲート時間を自由に制御できる特殊なCCDカメラで,イメージとして計測する方法で,これを使うと,1つのカメラで圧力場と温度場を同時に撮影することが可能になる.
 将来は,"Morphing Aircraft" などの変形する物体周りの全周計測技術の開発にも,取り組む予定であり,医療で使われるCTやMRIのように,航空機やロケットの周りの流れ場を総合診断し,リアルタイムで設計に反映するためのシステムの構築を目指している.
   
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